デザインコンセプトとは?テーマとの違いやメリット・作成方法を解説
複数人、もしくは複数のチームがデザインを担当するとき、デザインコンセプトがあるとブレや迷いが少なくなります。しかし「デザインコンセプトって何?」と疑問に思っている方もいますよね。
そこでこの記事では、デザインコンセプトとは何かを詳しく解説。さらに、デザインコンセプトの必要性や、デザインコンセプトを作る方法についても解説します。デザインコンセプトについて知りたい方、よく分からないと感じている方はぜひご覧ください。
目次
デザインコンセプトとは
デザインコンセプトってそもそも何?と思っている方もいますよね。そこでまずは、デザインコンセプトとは何かを、次の項目に分けて解説します。
- デザインコンセプトの意味
- デザインコンセプトの必要性
- テーマとコンセプトの違い
デザインコンセプトの意味
デザインコンセプトとは、デザインをする際に基本となる骨格のことです。「コンセプト」の元々の意味を辞書で調べると、次のように書かれています。
概念、考え。本来哲学用語だが、美術、音楽、服飾、広告などの分野でも、新しい観点・着想による考え、主張の意で使われる。
創造された作品や商品の全体につらぬかれた、骨格となる発想や観点。
出典:コトバンク
この中にもあるように、コンセプトは作品や商品の全体に一貫していることが重要です。例えば、ひとつのブランドで複数の商品やサービスを展開する場合には、共通したデザインコンセプトの元でデザインを作り上げます。
デザインコンセプトの必要性
デザインをする際、1人ではなくチームで作業することもあります。また、1つのブランドで複数の商品やサービスを展開し、それぞれ別のデザインチームがデザインを担当するのもよくあることです。
デザインコンセプトとして骨格を作っておくことで、複数のチームが動く場合にも軸をぶらさず一貫性のあるデザインを作れます。また、デザインコンセプトがあれば、デザインチーム内で複数のアイディアが出たときに、よりコンセプトに沿った方針を選べるため、迷わず仕事を進められます。
デザインコンセプトは、ブランドのイメージを作り上げるとともに、他社との差別化にも役立つものです。
テーマとコンセプトの違い
コンセプトと混同されやすいのが、テーマです。テーマとは、お題や主題のことを指します。それぞれのテーマを解決するための方法がコンセプトです。1つのテーマに対して、複数のコンセプトを作れます。
デザインを例に考えてみると、例えばテーマが「クリスマス」であれば「赤と緑を中心にデザインを構成する」「クリスマスツリーのイラストを使う」「ゴールドを使ってきらびやかな雰囲気を演出する」といったコンセプトが考えられます。
デザインコンセプトは、テーマを表現するための手段と言い換えることも可能です。
デザインコンセプトを作成するメリット
デザインコンセプトを作成するメリットは次の4つです。
- デザインに一貫性を持たせられる
- チームメンバーが共通の認識を持てる
- デザインの説得力が増す
- 他のデザインとの差別化ができる
それぞれ、詳しく解説します。
デザインに一貫性を持たせられる
デザインコンセプトを作成することで、デザインに一貫性を持たせられます。例えば、上記のクリスマスの例で言えば「クリスマス」というテーマだけでは、各チームが作るデザインはバラバラな印象になる可能性が高まります。
すべての商品やサービスが赤と緑で構成されていれば、同じブランドのデザインだとわかりやすくなるでしょう。「赤」と「緑」というざっくりした決まりだけでなく、具体的なカラーコードをコンセプトとして設定すれば、より統一感のあるデザインを作れます。
チームメンバーが共通の認識を持てる
デザインコンセプトを作成すると、チームメンバーが共通の認識を持てる点もメリットです。例えば、テーマが「クリスマス」のWebサイトで、バナーのデザインを作るとなった場合、コンセプトが決まっていなければ、チーム内でどんなデザインならクリスマスと感じられるかを議論するところから始めなければなりません。
しかし、コンセプトが決まっていれば、チーム内で共通の認識を持ち、コンセプトに沿ったデザインを作るところからスタートできます。チームメンバーが共通の認識を持つことで、デザインのすりあわせにかかる時間を減らせます。
デザインの説得力が増す
デザインコンセプトを作ることで、デザインの説得力が増します。例えば、デザインについて顧客に説明する際に「クリスマスっぽい感じのデザインを作りました」というのと「テーマがクリスマスなので、赤と緑を基調にデザインを作りました」というのでは、説得力が違います。
デザインコンセプトを作って統一感のあるデザインを作っておけば、顧客に対して説明する際にも説得力を高められます。
他のデザインとの差別化ができる
デザインコンセプトを作ることで、他のデザインとの差別化ができます。例えば、クリスマスをテーマとした場合、多くの場合赤と緑はディープなカラーを使います。しかしここでブライトカラーを使ったり、逆にダークカラーを使ったりするだけでも他とは印象が異なります。
このように、コンセプトをしっかり決めておくことで、他との違いを生み出しデザインを差別化することも可能です。
デザインコンセプトを作成するステップ
デザインコンセプトを作成するステップは次の通りです。
- ペルソナを設定する
- プロダクトを表現するキーワードを付箋に書き出す
- キーワードからテーマを決定する
- 要素ごとにデザインコンセプトをまとめる
- まとめたコンセプトがプロダクトに合っているか確認する
- デザインコンセプトシートをまとめる
それぞれ、詳しく解説します。
ペルソナを設定する
まずはペルソナを設定しましょう。
すべての商売やサービスは究極的には「誰かの困りごと」を「どのように解決するのか」ということに尽きます。
その「誰か」が曖昧なままコンセプトを作ってしまうと、コンセプト自体がぼやけてしまい、最もサービスを届けたい「誰か」にサービスが刺さらず、せっかくの努力が水の泡と化します。
またペルソナは具体的な属性(年齢、性別、家族構成、住まい)以外にも「悩み」「行動」「ゴール」とセクターを分けて考えると整理しやすいです。
ペルソナ設計の細かい手順については別記事のペルソナ設計とは?メリットや設計方法・コツをわかりやすく解説で書いてますのでぜひ参考にしてみてください。
プロダクトを表現するキーワードを付箋に書き出す
次に、付箋を使ってプロダクトを表現するキーワードを書き出しましょう。
このとき、自分たちのサービスやプロダクトを表現するキーワードだけを考えるのではなく先ほど設定したペルソナを意識しながら、「事実」と「雰囲気や感情」に分けて書き出すのがおすすめです。
事実は例えば、プロダクトの「種類」や「カテゴリ」「ターゲット(ペルソナ)」などのキーワードが考えられます。
一方、雰囲気や感情は「安心感」「落ち着き」「イベントを楽しむ」などのキーワードが考えられます。
次のようなフレームワークを利用すると、より多くのキーワードを書き出せます。
- マトリクス図
- スライダー
- マインドマップ
コンセプト設計のキーワード・アイディア出しに便利なフレームワーク
マトリクス図
マトリクス図とは、2つの軸を使ってマッピングをする方法です。
具体的には、縦軸には商品・サービスの質や特徴などを、横軸には価格帯や販売チャネルなどを設定することが一般的です。
ただしコンセプト設計の際には縦軸、横軸を質や特徴に設定しても大丈夫です。
この2つの軸に沿って各競合他社と自社をマッピングすることで、市場における自社の立ち位置や競争優位性を確認することができます。
また、マトリクス図を用いることで、顧客のニーズや嗜好を考慮した製品・サービスの開発や、マーケティング戦略の立案、販売チャネルの最適化など、ビジネスの意思決定に役立てることができます。
スライダー
スライダーは、対立する2つの要素を複数用意し、どちらにより近いかをイメージさせるものです。
どのような軸を作れば良いかはプロダクトによって異なりますが「きれい⇔かわいい」「未来的⇔レトロ」といった軸が考えられます。
このようなスライダーは、ユーザーにとってどのような要素が優先されるかを視覚的に理解し、適切なバランスを取ることができるように関係者間での合意を得るためにも役立ちます。また、デザイン分野やプロダクトのアイデアを評価する場合にも便利です。
マインドマップ
マインドマップとは、1つの中心となるテーマを取り上げ、その周りに紐付くアイデアや情報を枝分かれさせて可視化する手法です。まずは、中心となるテーマに関連するキーワードを書き出し、それぞれのキーワードに対して更に関連するアイデアや情報を紐付けていきます。このように、情報を視覚的に整理することで、アイデアを整理したり、新しい発想を生み出したりすることができます。
プロダクトに関連するキーワードをピックアップするためには、マインドマップ上で紐付けられたアイデアや情報を全て洗い出し、重要度や優先度に応じて評価していきます。また、複数のキーワードを組み合わせたり、枝分かれを繰り返して新しい発想を生み出すこともできます。マインドマップは、アイデア出しや問題解決など、幅広い場面で活用されています。
マトリクス図とスライダーは複数人でも利用できるフレームワークですが、マインドマップは1人で作業する際に適した方法です。
キーワードを書き出す際には、外部から見ても納得感のあるキーワードを選ばなければなりません。例えば、プロダクトはまったく車と関係がないのに、制作チームに車が好きな人が多いからといって「車」というキーワードを出しても納得感はありません。
たくさんのキーワードを出した後は、1つ1つのキーワードがプロダクトに適したものになっているか確認してみましょう。
キーワードからテーマを決定する
キーワードを抽出できたら、次はキーワードからテーマを決定します。「クリスマスの幼児向けおもちゃ」といったように、ひとつひとつのキーワードを組み合わせてキャッチフレーズを作るイメージです。
テーマを作るときに重要なのは、プロダクトの顧客にどのような印象を持ってもらいたいかです。プロダクトが持っている要素の中から、特に顧客に感じてもらいたい要素をテーマとして抽出してみてください。
さらに、顧客に「使ってみたい」と感じさせるテーマを設定することも重要です。複数のテーマを作ったり、クライアントにもテーマ案をもらったりしながら、より良いテーマを作りましょう。
要素ごとにデザインコンセプトをまとめる
デザインテーマが決まったら、次は要素ごとにデザインコンセプトをまとめていきましょう。次のような要素に対して、テーマを表現するためのコンセプトをひとつひとつ決めていきます。
- イメージ
- パーツの形
- タイポグラフィ
- 色
- インタラクション
イメージは「安心感」や「落ち着き」といった、全体のテイストのことを指します。テーマとともに、イメージも考慮しながら、他のデザインコンセプトを決めましょう。
パーツの形とは、さまざまなデザインに使うパーツをどのような形にするかです。例えば、直線はシャープな印象を与えますし、曲線や角丸は柔らかい印象を与えます。
タイポグラフィとは、フォントのことです。どんな種類のフォントを使うかだけでなく、文字の大きさや太さについても決めておくと、統一感が高まります。
色も、与える印象を変えるための重要な要素です。メインカラーだけでなく、サブのカラーも決めておくとよいでしょう。
インタラクションは、Web制作の際に利用します。「相互作用」という意味の言葉で、ユーザーが何らかのアクションをしたときに、サイト側が返すリアクションのことをインタラクションと呼びます。例えば、ボタンをクリックした時に、実際にボタンを押した時のように画像が動くのがインタラクションです。
インタラクションを大きくすればポップな印象を与えますし、控えめにすれば落ち着いた印象を与えます。
上記の要素それぞれ、どのようなコンセプトを採用するか決めます。さらに、正反対の印象を与える要素についても記載しておきましょう。極力避けるべき要素を知っておくことで、よりコンセプトに沿ったデザインを作りやすくなります。
まとめたコンセプトがプロダクトに合っているか確認する
コンセプトをまとめたら、まとめたコンセプトがプロダクトに合っているか確認しましょう。テーマを中心としてコンセプトをまとめていると、いつの間にかプロダクトとズレが生じてしまうこともあります。
コンセプトとプロダクトを照らし合わせ、コンセプトがプロダクトの魅力を最大限に表現できるものとなっているか、コンセプトとプロダクトのイメージがちぐはぐになっていないか最終確認を行ってください。
デザインコンセプトシートをまとめる
プロダクトとデザインコンセプトのズレがなければ、決定したデザインコンセプトを1枚のシートにまとめましょう。まとめ方は、チーム全員がわかりやすいなら、どのような方法でまとめてもかまいません。
色やタイポグラフィは、デザインシートにサンプルを掲載しておくと、より視覚的にわかりやすいシートを作れます。シートを印刷せず、パソコンやタブレットで見られる形で作るのであれば、インタラクションのサンプルも掲載しておくと便利です。
デザインコンセプトを作成しても、頭の中で覚えているだけだと、実際にデザインを作るときにズレが生じ、最終的に修正が必要になってしまうことがあります。デザインコンセプトシートを確認しながらデザインを作成すれば、ズレを防ぎ、修正の手間を減らせます。
また、どんなデザインにするかクライアントに共有する際にも、デザインコンセプトシートがあれば、わかりやすく共有可能です。
まとめ
デザインコンセプトとは、どのようなデザインを作るかを示した骨格のことです。デザインコンセプトがあれば、複数のチームが動いていても迷わず統一感のあるデザインを作れます。
デザインコンセプトを作るためには、まずプロダクトに関連するキーワードをピックアップし、テーマを決めるところからスタートします。決まったデザインコンセプトは、1枚のシートにまとめておくと、確認にも共有にも便利です。
この記事を参考に、デザインコンセプト作りに挑戦してみてください。
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