ムードボードとは?メリットや具体的な活用方法・作成方法を紹介
デザインを作成する際に、クライアントやチームメンバーと認識のズレが生じてしまったことはないでしょうか。デザインの作成を進めてから認識のズレが発覚すると、大幅な手戻りが生じる場合があります。
しかし、イメージの共有は言葉だけでは難しいものです。そこで便利なのがムードボードです。ムードボードとは、デザインのイメージを1箇所にまとめたものです。上手に活用すれば、デザインにかかる時間を短縮でき、修正を減らせる可能性もあります。
そこでこの記事では、ムードボードとは何か詳しく解説。さらに、メリットや具体的な活用方法も紹介します。デザインイメージの共有がうまくいかずに困っている方はぜひご覧ください。
目次
ムードボードとは
ムードボードとは、デザインのイメージやコンセプトをどこか1箇所にまとめ、チームメンバー同士が共通の認識を持てるようにする手法です。
イメージは、言葉だけでは共有しづらいものです。具体的な素材を用いて視覚的に共有することで、イメージのズレを減らせます。あらかじめ認識のすり合わせを行うため、修正を減らすためにも役立ちます。
Webデザインはもちろん、インテリアやファッションなどの分野で活用されている手法です。
ムードボードの構成要素
ムードボードに追加されることが多いのは、次のような素材です。
- 画像
- イラスト
- 色
- フォント
- ロゴ
- テクスチャ
こうした素材が使われることが多いのですが、必ずしも上記の内容にこだわらなければならないわけではありません。作りたいイメージと一致するものがあれば、できるだけ追加しておきましょう。
ムードボードとイメージボードの違い
ムードボードと似た役割を持つものに「イメージボード」があります。
ほぼ同じ意味で使われることも多いのですが、画像だけを集めて作ったものをイメージボード、画像だけでなくフォントやロゴなども加えて集めたものをムードボートと呼ぶこともあるのです。
「イメージボード」という言葉が出たときには、どちらを指すのが確認しておいた方が安心です。
ムードボードを作成するメリット
ムードボードを作るのには、手間と時間がかかります。それでも活用されているのは、次の3つのメリットがあるためです。
- 制作時間の短縮
- チーム内コミュニケーションの円滑化
- デザインの修正削減
それぞれ、詳しく解説します。
制作時間の短縮
ムードボードによって、デザインを作るのにかかる時間を短縮できます。
ぼんやりとしたイメージから、具体的なデザインを作り上げるのは大変な作業です。いろいろなことを考えて試行錯誤した末に、なかなかうまく形にできないこともあるでしょう。
しかし、ムードボードにイメージがまとまっていると、アイデアが浮かびやすくなります。また、自分が作ったデザインがイメージに沿ったものかどうか、ムードボードを見ながら確認することも可能です。
ムードボードがあることで悩んでいる時間を減らせるため、制作時間の短縮につながります。
チーム内コミュニケーションの円滑化
イメージのすり合わせを行う際にお互いが考えていることにズレがあると、コミュニケーションがうまくいかない場合があります。ムードボードがあれば、それを見ながら話を展開できるため、よりスムーズなコミュニケーションが期待できます。
例えば、単に「赤」といっただけでは、相手がどのような明度や彩度のものをイメージしているかわかりません。また、明度や彩度を言葉だけで説明するのも難しいでしょう。
しかしムードボードがあれば「赤」のイメージをお互いに統一できます。その上で会話を進められるため、円滑なコミュニケーションを取りやすいのです。
デザインの修正削減
デザイン作成後に、クライアントから修正依頼が届くのは珍しいことではありません。しかし、ムードボードを作成しておけば、修正依頼の量を減らせる可能性があります。
修正依頼は、クライアントとデザイナーでのイメージのズレから発生するケースも珍しくありません。特にクライアントがデザインの経験や知識がない場合、説明を聞いた時点では「良い」と思っていたものでも、完成したら「何か違う」と感じてしまうケースもあるでしょう。
ムードボードを用いて事前に認識をすり合わせておけば「何か違う」の発生確率を下げ、修正を削減できます。
ムードボードの具体的な活用方法
ムードボードは、次のようなシーンで活用できます。
- ブランドイメージの共有
- プロジェクトのビジョンの共有
- クライアントとのコミュニケーション
それぞれ、詳しく解説します。
ブランドイメージの共有
ブランドイメージとは、そのブランドが持っている世界観のことです。
商品やサービス、公式サイトなどを見るだけでもある程度世界観の把握は可能ですが、ムードボードにまとめることでより深く世界観を理解できます。また、自分が作ったデザインとムードボードを照らし合わせて、違和感のあるものとなっていないか確認も可能です。
プロジェクトのビジョンの設定
新しいプロジェクトを立ち上げる場合、明確にビジョンが定まっていないこともあります。プロジェクトのビジョンを設定するのにも、ムードボードが役立ちます。
例えば、それぞれが製品やサービスに合っていると思うムードボードを持ち寄り、その中からもっとも良いものを選ぶ方法もあるでしょう。もしくは、数点の素材だけを集めたムードボードに、議論しながら素材を加えていくことでイメージを膨らませるやり方もあります。
ムードボードを活用することで、抽象的なビジョンをより具体的に育てあげられます。
クライアントとのコミュニケーション
クライアントとのコミュニケーションにも、ムードボードは役立ちます。
複数のムードボードを用意し「どちらがよりイメージに合うか」を選んでもらえば、クライアントがイメージしているものをつかみやすいでしょう。
また、イメージが違うと言われたときには、どの素材はイメージに合っていてどの素材は違うと感じるのかヒアリングしてみるのもひとつの方法です。それによって、クライアントのイメージをよりつかみやすくなります。
ムードボードの作り方
ムードボードの作成は、次の手順で行います。
- 素材の収集
- 素材のグループ分け
- グループの特徴を表す名前付け
- 素材の追加と見直し
それぞれ、詳しく解説します。
素材の収集
まずは、イメージに合った素材を収集します。
最初は、イメージを言語化すると素材を探しやすくなります。例えば「春」をイメージしたデザインを作ると、今見ている素材は春らしいものかを判断しやすくなります。「春」と一言でいっても幅広いデザインがあるため、よりイメージに近いものをピックアップします。
多くの素材を集めると、だんだんと他者にもイメージが伝わりやすいものとなるはずです。
素材のグループ分け
素材を収集する際、イメージに合ったものを選んだつもりでも、その中でさらにグルーピングができることも珍しくありません。
多くの素材を集めたら、さまざまな切り口でグルーピングし、その中でどれがよりイメージに近いか確認しましょう。グルーピングを行うことで、より具体的にイメージの絞り込みができます。
グループの特徴を表す名前付け
グルーピングが完了したら、それぞれのグループに共通した特徴を見つけ、名前をつけておきましょう。特徴を明記しておくことで、何を基準にグルーピングしたかわかりやすくなります。
また、イメージと違うと感じたムードボードを削除せず、残しておくことも重要です。イメージと違うムードボードを残しておくことで、自分のデザインとムードボードを比較し、別グループのイメージに近い仕上がりになっていないか比較しながら確認できます。
素材の追加と見直し
ムードボードは、1度作っただけで終わりではありません。作業の途中で良い素材が見つかった場合には追加しましょう。より多くの素材を追加することで、イメージの解像度が上がります。
ただし、素材を追加していく中でだんだんとムードボードのイメージがブレてきてしまう可能性があります。そのため、素材を追加しながら定期的にブレが生じていないか確認が必要です。
ブレが生じていると感じたら、素材のグループ分けをやり直してみてください。
ムードボードを作成する際のポイント
ムードボードを作成する際には、次のポイントを押さえておきましょう。
- 複数のムードボードを作成する
- 画像だけでなくカラーパレットやフォントも追加する
- ストーリーボードとあわせて使う
それぞれ、詳しく解説します。
複数のムードボードを作成する
ムードボードは、1つだけでなく複数作成し比較しながら使うと便利です。
上記で紹介した通り、集めた素材をグループ分けすると「似ているけれど違う」ムードボードが複数できあがります。このボードを利用すれば、より求められるものに近いデザインを作り上げられます。
また、クライアントへの提案でも、複数のムードボードがあると具体的に話を進めやすいでしょう。例えば「シックなイメージで作ってほしい」と言われたときには、シックなイメージの素材を集めたムードボードを複数用意します。それをクライアントに比較してもらい、どれが一番イメージに近いか選んでもらうと、認識のズレを減らせます。
画像だけでなくカラーパレットやフォントも追加する
画像以外にも多くの素材を追加すると、ムードボードはより便利なものとなります。例えば、次のような素材を追加しておきましょう。
- カラーパレット
- フォント
- テクスチャ
メインのカラーが決まっていたとしても、周辺で使う色が異なると完成したデザインにも差が出ます。ムードボードにカラーパレットが追加されていれば、メイン以外の部分にどんな色を使うか迷わずに済みます。
フォントやテクスチャも、デザインの雰囲気を左右する大きな要素です。どのようなものを使うかあらかじめ決定し、ムードボードに追加しておきましょう。
ストーリーボードとあわせて使う
ストーリーボードとは、製品やサービスを通してユーザーが得られる体験をイラストを使ってまとめたものです。アイデアをビジュアル化して伝えることで、認識をすり合わせやすくなります。とはいえ、ストーリーボードにおいてイラストはサポートのような存在です。ストーリーは文章をメインとして組み立てられ、その文章をイメージしやすいようイラストが添えられています。
ストーリーボードとあわせてムードボードを使用すると、顧客の体験とブランドや製品の世界観にズレがないかをよりわかりやすく確認できます。
おすすめのムードボード作成ツール
ムードボードはアナログでも作れますが、オンライン上のツールを使って作成すると共有や素材の追加・削除をしやすく便利です。おすすめのムードボード作成ツールは次の3つです。
- Canva
- Figma
Pinterestは、画像を収集してボード上に掲載できるツールです。自由にボードを作成できることに加え、チームメンバーと共有できる点も便利です。
キーワード検索でPinterest上にある画像を検索可能。さらに、ボードに追加した画像と類似の画像を表示してくれるため、イメージに合った素材を集めやすい点もメリットです。
Canva
Canvaは、画像の加工や編集にもよく使われるツールです。Canvaには多数のテンプレートが用意されており、画像を追加するだけで簡単におしゃれなコラージュを作成できます。
素材やフォントもイメージに近いものに変更すれば、簡単に1枚のムードボードが完成。最初にイメージに近いテンプレートを選んでおくのがポイントです。
Figma
Figmaは、ブラウザ上でデザインを作成できるツールです。ワイヤーフレームやプロトタイプを作るのによく使われていますが、ムードボードの作成にも活用できます。
画像をアップロードしたら、好きな場所に好きなサイズで配置可能。1枚のムードボードを作る場合だけでなく、複数のムードボードを並べて比較したい場合にも便利です。
まとめ
この記事では、ムードボードについて解説しました。
ムードボードは、チームメンバーやクライアントとイメージを共有するのに非常に便利なツールです。言葉でのイメージ共有では食い違いが生まれることがありますが、ムードボードを使えば認識のズレを避けられます。
オンライン上には、手軽にムードボードを作成できるツールもあります。この記事を参考に、ムードボードの作成にチャレンジしてみてください。